「事務手数料」「金利」の名目でも報酬の減額に——公取委が10月に出した勧告2件から読む、受注側の確認点
請求書の金額より入金が少ない。差額には「事務手数料」「金利」と書いてある。——そうした差引きが、公正取引委員会の勧告で「下請代金の減額」と認定された事例が、2026年10月に2件続けて公表されました。
この記事では、公表された内容を整理し、受注する側が入金額を確認するときの視点をまとめます。特定の企業を評価する意図はなく、公表された事実と制度のポイントを一般的な情報として紹介します。
勧告の内容:2件の概要
どちらも根拠は「改正前の下請法」です(出典は記事末の公式情報)。
株式会社マルゼン(2026年10月29日)
- 対象:下請事業者385名(業務用厨房機器の製造、修理、運送、設置の委託)
- 期間:令和7年4月〜令和8年1月
- 内容:下請代金から、一定率を乗じて得た額を「事務手数料及び金利」の名目で差し引いていた。差引額は計6,088万8,107円
- 措置:不利益額の全部を支払済み。今後、受託事業者に責任がないのに代金を減じないことを取締役会の決議で確認する
株式会社日工(2026年10月30日)
- 対象:下請事業者16名(ボルト等の製造委託)
- 期間:令和6年12月〜令和7年12月
- 内容:自社の利益を確保するため、下請代金から、一定率を乗じるなどして得た額を差し引いていた。差引額は計1,712万8,945円
- 措置:不利益額の全部を支払済み。再発防止は同じく取締役会の決議
この2件から読み取れること
- 名目は問われていません。 「事務手数料及び金利」という名前が付いていても、受託側に責任がない差引きは、減額の禁止に当たるとされました
- 「一定率」での差引きが共通しています。 案件ごとの実費ではなく、代金に率を掛けて機械的に引いていた形です
- 差引額は全額が返されています。 勧告の結果、不利益額の全部が支払われました
なお、公表資料には「令和7年12月までの製造委託等には改正前の下請法が、令和8年1月以降の製造委託等には改正後の取適法が適用される」と書かれています。今回の2件の勧告は改正前の下請法を根拠としており、取適法に基づく勧告ではありません。
フリーランス向けの法律にも同じ考え方があります
フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)にも、受託側に責任がないのに報酬を減額することを禁じる規定があります(第5条第1項第2号。ジェイトップへの勧告も同じ条文です。詳しくは 振込手数料、実費を超えて天引きされていませんか を参照)。名目は違っても、「責任がないのに引かれる」ことが論点になる点は共通しています。
受注側で確認しておけること
勧告は発注側に向けた措置で、受注側に新たな義務が生まれるわけではありません。トラブルを避けるために、手元で次の3点を確認できます。
1. 請求額と入金額の差の「名目」を確認する
差額が振込手数料なのか、それ以外の名目なのかを入金明細や支払通知書で確かめます。名目が不明な差額は、そのままにせず発注側に問い合わせる材料になります。
2. 差引きの根拠が契約書・発注書に書かれているか
差し引く項目と計算方法が、取引の条件として書面や電磁的方法で残っているかを見ます。見積書や契約書に書かれていない控除は、確認の対象になります。
3. 毎回「同じ率」で引かれていないか
件ごとの実費ではなく、代金の何%という形で毎回引かれている場合は、差額の推移を記録しておくと確認しやすくなります。
請求額の記録を案件ごとに残しておく
差額に気づくには、「いくら請求したか」が手元にきちんと残っていることが前提です。書類が案件ごとに散らばっていると、入金額との突き合わせに手間がかかります。
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関連記事: 振込手数料、実費を超えて天引きされていませんか / フリーランス新法、令和7年度は勧告10件・指導1,542件
公式情報
- 公正取引委員会「株式会社マルゼンに対する勧告について」(令和8年10月29日): https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/oct/261029_maruzenn.html
- 公正取引委員会「株式会社日工に対する勧告について」(令和8年10月30日): https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/oct/261030_kinki_toriteki.html
※本記事はCrewbookが提供する情報です。自社サービスの紹介を含みます。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は弁護士や所轄の専門機関にご確認ください。掲載している内容は2026年11月2日時点の公正取引委員会の公表情報に基づくもので、今後の法改正や運用の変更により変わることがあります。
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